唐突ですが、皆さんは物理と聞くとどんなイメージを持っているでしょうか。
難しそう? 訳が分からない? 数式ばっかり? 陰気そう? 奇人変人? もてなさそう? 気持ち悪い? 死ね?
物理をやっていた身から一つ言わせて頂くと、違います。
物理はロマンです。
確かに、大学では虫取り少年をそのまま大人にしたような同級生も沢山いましたし、有機物が嫌いという衝撃の発言をした後輩もいました。飲み会で歓談していたらいきなり「わかった!」みたいなことを言って、居酒屋の紙ナプキンに数式を書き殴り始める先輩もいました。
しかしながら、もう一度いいましょう。そういうのも含めて物理はロマンなのです。
物理とは”もののことわり”のことです。
われわれが生きているこの世界の構成がどうなっているのか、そのことわりを人間の論理で一つずつ解き明かしていこうという、大変かっこいい試みなのであります。言い換えれば、この世を創造した神、そして、人間の知性の限界に対しての挑戦なのです。
そもそも、火も水も土もあの子のスカートも更に言えばその中も全て物質で構成されているわけです。つまり、そこには物理があるのです。
しかし、大変残念なことに、学問の専門化・細分化が進むアカデミズムの潮流の多分に漏れず、というかむしろそれを先導するような状況になっているのが、今の物理の状況と言わざるを得ません。
よって、今日の記事では、そのような状況に一石を投じるべく、普段の生活で如何に物理用語が使えるのかというのを、具体例を交えつつ紹介させて頂きたいと思います。
本記事を読んで読者の皆様が物理に対してより一層親しみを感じて頂ければ幸甚の至りです。
女性を口説くときに使える! かっこいい物理用語10選!!
フェルミの黄金律
あるエネルギー固有状態 |0>(基底状態) が摂動 を受けて充分時間が経過した後、別の固有状態 |m>(励起状態)に遷移する単位時間当たりの確率を表す量子力学の公式です。
イメージは意気消沈している(固有エネルギーが低い)部下に発破をかけた(摂動を与えた)際に、その部下がどこまで頑張れるかは頑張り状態(別の固有状態)ごとに確率で表されますという感じです。発破エネルギー+意気消沈時の部下エネルギー=頑張り状態のエネルギーになる確率が一番高くなります。
とにかく名前がかっこいいです。中二病心をくすぐられます。英語で書くとFermi’s Golden Ruleとなり、よりかっこよくなります。では、実際に使ってみましょう。
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男「今日は楽しかったね」
女「そうだね!」
男「じー……」
女「どうしたの? そんなに見つめられると恥ずかしいよ……」
男「ごめん、ちょっと摂動与えたくなっちゃった。いい?」
女「えっ!?」
ガバッ
女「きゃっ!」
男「どう? 摂動を足した分だけ、俺の固有エネルギーと君の固有エネルギーが一緒になったね」
女「遷移しちゃう!! (充分時間が経過した後) あっ!!! ……」
男「これがフェルミの黄金律さ」
女「好き……」
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シュレディンガーの猫
量子力学的にはミクロな粒子の存在は観測するまでは確率で表されるので、もしミクロな粒子の存在場所によって生き死にがわかれる猫を箱に入れて、そのままにしたら、観測者が箱を開けるまでは猫が生きているか死んでいるか分からないという思考実験です。
これは有名かもしれませんね。普通に、「私それ知ってる!」という感じで盛り上がるかもしれません。しかし、知らなかった場合でも問題ありません。実際に使っている様子を見てみましょう。
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合コン中
男「シュレディンガーの猫って知ってる?」
女「なにそれ? 猫の種類?」
男、それを聞き、いきなり大きな段ボールを自分と女の頭にかぶせる。
女「えっなに??? いきなりどうしたの!?」
男「段ボールの中の二人の様子は外から見えていない。これはつまり、外の観測者(合コン仲間)たちから見て、俺たちが付き合ってるか付き合ってないか分からないということなのさ。これがシュレディンガーの猫だよ」
女「なにそれ意味わかんないし早く出し……あれ、私という存在が歪んでいく……!!!!」
合コン仲間「おいおい! お前らいったい何してんだよ!」
ガバッ
女「男君は私の彼氏、オトコクンハワタシノカレシ……」
合コン仲間「えっ……」
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イッテルビウム
原子番号70の元素。元素番号はYbで、元素分類上はランタノイドに属します。スウェーデンのイッテルビー村で発見されました。紛らわしいイットリウム(Y)は原子番号39の元素です。ちなみに、イットリウムもイッテルビー村の近くで発見されました。紛らわしいですね。最初に見つかった鉱物がイッテルバイト、そこから抽出したイットリウムの酸化物をイットリア、最終的に取り出された原子がイットリウムです。
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男「もしかして、イッテルビウム?」
女「イットリウム」
男「これはイットリア」
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こちらからは以上です。
モット転移
温度や圧力などを変化させたときに、金属(電気を通す)が絶縁体(電気を通さない)、もしくは絶縁体が金属に変化することがあるのですが、これが電子間のクーロン相互作用の変化によるものをモット転移といいます。
イメージは引きこもりがたくさん住んでいるアパートに圧力をかけまくったら、アパートが壊れて部屋の壁が崩れ、今まで全然動かなかった引きこもり(絶縁体中の電子)が外に出て動き回るようになった(金属中の電子)感じです。
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店を出る二人男「これからもう一軒行かない? おしゃれなバー知ってるんだよね」
女「えー……、どうしようかな……、終電もあるし……」
男「そんなつれないなー。絶縁体みたいなこと言わないでよ」
女「男君ちょっとクーロン相互作用強すぎない? あんまりしつこいと怒るよ…?」
ガバッ
女「きゃっ!」
(男、女の温度や圧力を上げる行為をする)
女「(充分時間が経過した後) あっ!!! 遷移しちゃう!!」……
女「モット一緒にいる……」
男「ずいぶん抵抗減ったね」
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相対性理論
かの有名なアインシュタインの理論です。説明は割愛します。
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男「相対性理論って知ってる?」
女「知ってる! アインシュタインでしょ? でも名前しか知らないけど(笑)」
男「じゃあ教えてあげようか?」(眼鏡を小指で上げながら)
女「面白そう! できるだけわかりやすく説明してね」
男「全然いいよ。手取り足取り教えてあげる!」
女「手取り足取り……?」
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念のため解説すると、ここで言っている相対性理論は、(男女が)相対(する際の)性(の)理論のことです。これ以上は割愛します。
ブラケット記法
最初のフェルミの黄金律でも出てきた、|>という記号がケットで、<|がブラです。ディラックが発明した記法で、記号の中には状態を表すベクトルが入ります。ディラックの記法とも言います。英語で括弧のことをブラケットというので、それを分割した、言ってしまえばディラックなりの駄洒落です。例えばα、βという二つのベクトルがあるとすると、<α|β>は2つのベクトルの内積を表しています。
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女「<α|」
男「|β>」
<α|β> =δ(α-β)
女「ちょっと、私のブラ外さないでよ!」
※ここで、α、βは正規直交基底とする。
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強い相互作用
自然界を支配する4つの基本相互作用の1つです。素粒子間に相互に働く力は全部で4つあり、弱い順に重力相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用、強い相互作用であることが分かっています。マクスウェルが電場と磁場を統一したように、そして、ディラックが特殊相対性理論と量子力学を統一したように、これらの4つの相互作用を一つの大統一理論で記述しようという試みが精力的に行われています。(弱い相互作用と電磁相互作用は電弱統一理論で統一済み)
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男「一目ぼれです! 電気が走るみたいにびびっと来ました! 付き合って下さい」
女「そんな陳腐な告白なんて聞き飽きたわ。消えて」
男「電磁相互作用だと弱すぎるってことですか?」
女「は?」
男「一目ぼれです! グルーオンがガツンと飛んできました! 10^(-24)sぐらいの時間で!! 付き合ってください!」
女「そんなこと言われたの初めて! すごい強い相互作用を感じる……、重力の10^40倍ぐらいの……。いいわ、デートぐらいなら付き合ってあげる」
※強い相互作用の伝達はグルーオンという素粒子を介して行われる
※10^(-24)=0.000000000000000000000001
※10^(40)=1の後に0が40個
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ボースアインシュタイン凝縮
外部ポテンシャルによって閉じ込められたボース粒子(光子やグルーオンなど、整数スピンをもつような粒子。電子はフェルミ粒子)が絶対零度近くまで冷却された際、それらの粒子集団が全て最低の量子状態をとるよう重なり合ってしまう現象のこと。
イメージとしては、本棚に一冊ずつ本を並べてあるんだけど、絶対零度になった瞬間すべての本が一番左下の本と重なって存在するようになるという感じです。(我々の身の回りの物体は全て量子状態が重なり合わないフェルミ粒子でできているので、そのようなことは起こりません)
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冬のある日の夜
女「今日はご馳走様。それにしても外寒すぎるね」
男「そんなんどうだっていいから冬のせいにして、BECしよう」
……そして、その夜、二人の固有状態が重なり合ったのであった
※ボース=アインシュタイン凝縮は通常Bose-Einstein Condensationの頭文字をとってBECと言われます。
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陽子反陽子対消滅
普段生活していると実感しませんが、世の中には反物質というものが存在しています。原子は電子や陽子、中性子から構成されていますがそれぞれ反電子、反陽子、反中性子という対の存在があって、もしそれらが出会うと、エネルギーと光子を残し、粒子も反粒子も消滅してしまいます。これが対消滅です。
ちなみに、ここで一つ興味深い実験があるのでついでに紹介してしまいましょう。真空とは定義上中に何の粒子もない状態を意味しています。空っぽということです。しかし、そんな真空中にエネルギー(物体ではない)を集中させると、極極まれになぜか電子と反電子(つまり、物体)が発生するという現象が観測されました。物体がないところから物体が発生した。これはどういうことでしょうか?
結局、最終的に分かったのは、真空というのは空っぽではなく、電子と反電子が対で生成したり消滅したりを繰り返していて、それが釣り合っているので、見かけ上何もないように見えているだけということでした。真空にもロマンが詰まってますね。
さて、本題といきましょう。
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女「へー、あんたも陽子っていうんだ。 私も陽子。苗字は反で、反陽子って言うんだ。よろしくな」
その日、二人の女の子が行方不明になった
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もはやタイトルと関係なくなってしまったことを深くお詫び申し上げます。
超弦理論
超ひも理論、スーパーストリング理論とも言います。最先端の物理では、すべての物質を限界まで細かく拡大していくと、粒子ではなく紐として存在するという仮説が唱えられています。これが超弦理論です。上で大統一理論の話を少ししましたが、その最有力候補の一つといえます。
超弦理論では、世界を10次元の時空間としてとらえ、その中を開いたり閉じたりした紐が特定の振動モードで存在していると考えます。
我々が認識できるのは空間3次元+時間1次元の計4次元のみなので、残りの6次元はなんなのかという話になりますが、正直よくわかっていません。計算上出てくるといってもいいかもしれません。この点がまだ一部の学者たちから批判されているところで、次元を増やす=パラメータを一つ増やすということなので、いくらでもこじつけられるだろうという人もいます。
また、計算的な技巧に終始していて物理の本質である実験で確かめられないことは物理ではないという人もいます。要はまだ道半ばの理論なのです。
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女「ひさしぶりだね。男君って大学で研究続けてるらしいけどどんな研究してるの?」男「超ひも理論」
女「なんか難しそうだね……。まぁ、いいや、引っ越して知り合い男君しかいなくてさびしいんだよね。今度一緒にご飯でも食べようよ」
男「いいよ」
~数年後~
女「まったく!! いつまで寝てるの! だらしないな~。それじゃあ私仕事いくし、お昼ご飯は冷蔵庫のもの適当に食べるか、机の上に1000円置いておくからどっかで食べてきてね。それじゃあいってきまーす」
男「いってらっしゃい」……
男「研究成功だ……」
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あとがき
女性を口説くときに使える物理用語10選、いかがでしたでしょうか?
このテクニックを使ってしまえば、たとえポテンシャルの低いあなたでもトンネル効果を実感できるはず!!!
ぜひ使ってみてくださいね。ってか、そんなことより紐になりたい!
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