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徒然なるままに・・・

就職→起業→独立(いまココ)の日々を綴ります。

狂言誘拐には意外な結末が!? - 東野圭吾「ゲームの名は誘拐」

読書記録

「ゲームをやってみないか」「誘拐ゲームだ」。東野圭吾の長編推理小説「ゲームの名は誘拐」を読了した。家出した取引先の娘を匿い、彼女と共謀し彼女の父親相手に身代金を奪おうと画策する。しかしその裏には驚くべき真相が隠されていた。

 

最初から読者をひきつける内容で、一気に読んでしまった。そして最後の最後にはまさかのどんでん返し。(まぁ中盤で薄々気づいてはいたけど・・・)

 

今日はそんな「ゲームの名は誘拐」のあらすじと感想について書いていきたいと思います。結末も書いてしまったので完全なるネタバレです。

 あらすじ

主人公「佐久間駿介」は広告代理店「サイバープラン」の凄腕社員である。様々な企画を成功に導いてきた実力の持ち主であり、大手「日星自動車」のキャンペーン企画も任されていた。しかしその企画は日星副社長の葛城勝俊によって白紙に戻されてしまう。憤慨した佐久間は酔った勢いで家まで押しかけ文句を言おうとするが、家の前まで来て冷静になり立ち去ろうとする。その時、葛城家から脱走する一人の女を見かける。

彼は葛城勝俊の弱みを握れると思い、彼女を追いかけ話しかけてみると、なんとその女は葛城勝俊の長女「葛城樹里」だった。愛人の子として生まれた樹里は腹違いの妹「千春」と喧嘩し家出してきたのだという。

それを聞いた佐久間は勝俊に一泡吹かせてやろうと樹里と共謀して狂言誘拐を画策し、勝俊から3億円強奪させようと考えた。

計画は順調に進み、見事3億円を得ることができたが、そこには驚くべき真相が隠されていた・・・。

結末

佐久間は葛城家の偽装戦略(ゲーム)にまんまとハメられていた。

佐久間が樹里だと思っていた人物は「千春」で本物の樹里は千春の手によって殺されていた。もともと愛人の子として生まれてきた樹里は葛城家にとっては必要な存在ではなく、父親も千春が殺したことは何一つ咎めなかった。彼らは犯人を佐久間に仕立て上げるために様々な伏線を張り巡らし、見事佐久間は本物の樹里殺害の犯人を演じきっていた。しかし、いざという時のために保険として残しておいた、樹里(千春)が佐久間の家で料理を作って運んでいた写真によって佐久間は勝俊に一泡吹かせることができた。

 

物語はここで終了し、千春が犯人として警察に捕まるというシーンも佐久間や葛城家が今後どうなるかも描かれていないので、ちょっとモヤモヤした感じで終了してしまった。葛城家の陰謀によって真相を隠されてしまった本物の「樹里」のことを考えるとなんともかわいそうな話だなぁと思ってしまった。

みどころ

全てを完璧にこなしたい完璧主義者「佐久間駿介」

勝俊から3億円を奪うために、思想から誘拐犯になりきり、全てを完璧にこなす佐久間の賢さに感服した。(とは言っても勝俊の出すお題を最適解で乗り越えていただけだがw)

犯人であればどのようにして相手に情報を漏らさないようにできるのか、あえて偽の情報を流して捜査を撹乱できないかなど、あらゆるリスクを考えて行動するところが素晴らしい。環状の高速を何周も走らせて警察が付いていないのかを確かめるのは頭がいいと思った。

緻密な計画や柔軟な発想など、目的に向かって最良の手段を考えだしそれを実行することができる実力を見ると、さすがは凄腕のサラリーマンといったところか。

 

最後に千春に睡眠薬入りのワインを飲まされてしまうシーンがあるが、自分を処分するであろう相手になぜ隙を見せたのかが個人的には疑問。たとえ相手の弱みを握ることができる千春の写真があったとしても、死んでしまったら意味がないと思うのだが・・・。(死んでもよかったと思っていたのだろうか)

佐久間駿介にお題を与えて楽しむ葛城勝俊

佐久間の作戦を千春から聞き、その作戦を今回樹里殺害を隠すために利用しようと考え、千春に指示を出して見事に佐久間を樹里殺害の犯人に仕立て上げた。

大企業の会社役員として凄腕を発揮する一方で裏では佐久間を見事に自分のプランのレールの上を走らさせるところはやはり並行して様々なプロジェクトを進めることが会社の経営者というところか。

佐久間と比較すると勝俊の方が一枚上手である。(そもそももともと今回は葛城家の方が有利な状況ではあったが)

佐久間に睡眠薬を飲ませ、最後にどんな切り札を出してくるのかを見ようとする点はやはり経営者でなかなか抜け目ないなと思った。最後の切り札だけは佐久間の勝利といったところか。

見事「家出少女樹里」を演じた千春

腹違いの姉「樹里」を殺害し、家を飛び出した千春。偶然居合わせた佐久間の作戦を聞き、これは使えると父親に報告する。このプランはいけると直感で感じることができるのはやはり葛城家の血筋がうかがえる。頭のいい男なら抱かれても構わないと思い、体を張って毛髪以上の証拠を獲得するところも物事を合理的に考える頭のいい女性だと感じる。

誘拐した時の脅迫文を作る際に「ご息女」と表現されるのを拒んだのは、樹里を正当な姉として認めていない、プライドがそうさせたのではないかと個人的に考えている。相当嫌いだったんだろうな・・・。

あとがき

今回は誰かに肩入れしたくなるような登場人物が全く出てこない。娘である樹里をかばわない勝俊、樹里を憎んで殺した千春、千春を利用して大金をせしめて勝俊をギャフンと言わせようと画策する主人公「佐久間」救えない人達ばかりである。

だからなのか、一体どういった結末が待っているのだろうか、一切人に感情移入しないまま楽しく、ワクワクしながら読むことができた。

やはり1番かわいそうなのは最初の方にも書いたが、樹里である。誰にも愛されずに妹に殺され、父親にも真相を消されようとしている。悲しむ者は今回の登場人物からは出てこない・・。

個人的には後味が悪いが、推理物として結末を考察しながら読むのは面白かった。

是非一度読んでいただきたい。